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「肉が主原料」の罠を暴く!ドッグフードの原材料分割表示を見抜く方法

「肉が主原料」という言葉に騙されていませんか?メーカーがトウモロコシなどの安価な材料を細分化して、肉を1番目に見せる「成分分割」の手法と、その見抜き方を徹底解説します。

Kylosi Editorial Team

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Pet Care & Animal Wellness

2025年12月26日
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#ドッグフード #原材料 #ペットフード安全法 #成分表示 #犬の栄養 #フードの選び方 #肉主原料
日当たりの良いモダンなキッチンで、ドッグフードの袋の横にある新鮮なサーモンとブルーベリーの皿を見つめるゴールデンレトリバー。

愛犬の健康を願う飼い主にとって、ドッグフード選びの基準となるのが「肉が主原料」であるかどうかです。パッケージの裏面を見て、一番最初に「鶏肉」や「ラム肉」と記載されていれば、多くの人は「これは高品質なフードだ」と安心するでしょう。しかし、ここにはペットフード業界特有のマーケティングの罠が隠されていることがあります。それが「原材料の分割表示(Ingredient Splitting)」です。この手法を使えば、実際には穀物の方が多く含まれているフードであっても、ラベル上では肉を主原料のように見せかけることが可能です。本記事では、賢い飼い主になるために、ラベルの裏に隠された真実を読み解く技術を専門的な視点から詳しく解説します。

原材料リストの基本ルールと「重量順」の落とし穴

日本のペットフード安全法および公正競争規約では、原材料は「使用した重量の多い順」に記載することが義務付けられています。一見すると非常に明確なルールですが、ここには「水分含有量」という大きな落とし穴があります。

生肉(チキン、ビーフなど)は約75%が水分です。一方で、トウモロコシ粉や乾燥ポテトなどの炭水化物源は水分がほとんど含まれていません。原材料の重量は「配合時の重さ」で計算されるため、水分をたっぷり含んだ重い生肉が1番目に来やすくなります。しかし、加工プロセスで水分が飛ばされると、最終的な製品に含まれる肉の割合は劇的に減少します。つまり、「一番最初に肉が書かれている」からといって、必ずしもそのフードの栄養の大半が肉から来ているとは限らないのです。

銀色のデジタルキッチンスケールに載った生の鶏胸肉と黄色のトウモロコシの粒の山。

「原材料分割表示(成分分割)」の巧妙な手口

「原材料分割表示」とは、特定の原材料をあえて細かく分けて記載することで、それぞれの重量を小さく見せる手法です。例えば、本来は「トウモロコシ」としてまとめるべきものを、「トウモロコシ粉」「トウモロコシグルテンミール」「全粒トウモロコシ」といった具合に3つに分けて表示します。

こうすることで、トウモロコシ全体の重量が肉を上回っていたとしても、分割された個々のトウモロコシ成分の重量は肉よりも軽くなります。結果として、原材料リストのトップには「肉」が君臨し、分割されたトウモロコシ成分はリストの中盤以降に隠れてしまいます。これは違法ではありませんが、消費者の「肉が一番多いフードを選びたい」という心理を突いた、非常に巧妙な表示戦略と言えます。

黒いスレート板の上に置かれた、霜降り牛の角切りと、トウモロコシの粒、コーングリッツ、コーンフラワーが入ったガラスボウルの静物。

警戒すべき「分割されやすい原材料」のリスト

ラベルをチェックする際、特に以下の原材料が複数回登場していないか確認してください。これらは分割表示の「常連」です。

  1. トウモロコシ系: トウモロコシ粉、トウモロコシグルテン、粉砕トウモロコシなど。
  2. 豆類: 黄えんどう豆、えんどう豆タンパク、えんどう豆繊維、えんどう豆粉など。
  3. 米・穀物系: 玄米、白米、米粉、米ぬかなど。

特に最近の「グレインフリー(穀物不使用)」を謳うフードでは、穀物の代わりに「えんどう豆」や「ジャガイモ」が分割されて多用される傾向があります。原材料リストの上位5項目の中に、同じ植物由来の成分が2〜3個含まれている場合は、それらを頭の中で合算して考える必要があります。合算した結果、肉の重量を超えてしまうようなら、そのフードの主役は肉ではなく植物性原材料である可能性が高いでしょう。

刺繍が施された黒いバッグに虫眼鏡をかざす手のクローズアップ。緑色の円形模様と金色のルーン文字が強調されています。

実践!ラベルの真実を見極める「再構築」テクニック

実際にフードを選ぶ際は、リストの最初の3〜5項目を重点的に分析しましょう。もし1番目が「鶏肉」で、2番目が「えんどう豆粉」、3番目が「えんどう豆タンパク」となっていたら、それは実質的に「えんどう豆フード」である可能性が大です。

トラブルシューティングと対策: もし現在与えているフードが分割表示を多用していることに気づいても、すぐにパニックになる必要はありません。愛犬の毛並みが良く、便の状態が安定しているなら、その配合バランスが愛犬に合っている証拠です。しかし、タンパク質不足が疑われる場合(筋肉量の減少や毛艶の悪化など)は、分割表示のない、より「肉の実質含有量」が高いフードへの切り替えを検討すべきです。切り替える際は、1週間から10日かけて徐々に混ぜる割合を増やし、消化不良を防ぐのが鉄則です。

夜の薄暗い部屋で、眼鏡をかけた女性がノートパソコンのあるデスクで小さな袋の中を覗き込み、その傍らでゴールデンレトリバーが座っています。

FAQ

原材料を分割して表示することは法律で禁止されていないのですか?

いいえ、禁止されていません。日本のペットフード安全法では、使用した原材料を全て記載する義務がありますが、それぞれの加工形態(粉末、抽出物など)が異なる場合、別の名称で記載することは正当な表示とみなされます。

「ミール(肉粉)」と書かれているものは避けるべきですか?

必ずしも避ける必要はありません。高品質なミールは水分を除去して濃縮されたタンパク源であり、生肉よりも効率的に栄養を摂取できるメリットもあります。重要なのは「何の肉か(鶏、牛など)」が明記されているかどうかです。

グレインフリーのフードなら分割表示の心配はないでしょうか?

むしろ逆です。グレインフリー(穀物不使用)フードでは、穀物の代わりにえんどう豆、ひよこ豆、ジャガイモなどが使われますが、これらが「えんどう豆粉」「えんどう豆繊維」のように細分化して表示されるケースが非常に多く見られます。

まとめ

「肉が主原料」というキャッチコピーは、ドッグフード選びの出発点にはなりますが、終着点ではありません。原材料の分割表示という手法を理解することで、私たちはマーケティングの魔法にかかることなく、愛犬にとって本当に価値のある食事を見極めることができるようになります。大切なのは、個々の成分に惑わされず、全体としてどのような栄養構成になっているかを想像する力です。もしフード選びに迷ったり、愛犬の体調に不安を感じたりした場合は、信頼できる獣医師やペット栄養管理士に相談することをお勧めします。愛犬の健康は、飼い主であるあなたの「読み解く力」にかかっています。